アルトリアブログ

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キルギスの夜

ウズベキスタンの首都タシケントから12時間かけてアンディジャンまでたどり着いた翌日。この日は朝から国境を越えてキルギスの町オシュへ行き,14時発のサルイ=タシ行きのミニバスに乗らないといけない。 

ホテルのフロントに宿代はスムで払うよう言われていたので,朝起きてまずは両替をしにバザールへ向かう。

20ドル札をピラピラさせながら歩いていると,闇両替商に呼び止められる。両替すると束のような1000スム札を渡されるのには,いい加減に慣れた。最近ようやく10000スム札ができたようだが,すべて置き換わる日はいつになるのか。

 

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束になった1000スム札を渡される

 

チェックアウトし,国境行きの乗り合いタクシーが集まる場所へ向かう。キルギス?と言いながら近づいてきた運転手と値段交渉する。相場は8000らしいが,いつものごとく押しが弱く12000までしか下がらなかった。

とりあえず車両に乗り込んだが,乗り合いタクシーは3人そろわなければ出発しない。14時にオシュに着くには11時にはここを出なければならないから,10時まで待って誰も来なければ3人分の料金を払って出発させることにした。

10時になったが誰も来る気配がないので交渉を開始する。しかし最初に妥協したのが悪かったのか運転手は強気で、40000と最初に言ったきり全く相手にしてこない。30分ぐらい銭闘をしたが下がる気配がなく、諦めて40000でいいから行けと手を振ると仲間とハイタッチして喜んでいた。なんだこいつら。40000スムって600円だから痛くもかゆくもないんだけどねっ!(ガガガ文庫

40分ほど走って国境に着く。ボーダーを越え,マルシュルートカ(ロシア圏の乗り合いバス)に乗ってオシュ市内へ行く。ATMでキルギス・ソムを調達し,バス乗り場へ向かう途中,SIMカードの出店を発見する。店番の中学生ぐらいのキルギス・ロリはとてもかわいく垢抜けていない感じで,僕が渡したiPhoneと必死に格闘していた。

 

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オシュ市内

 

田舎から買い出しに来たのであろう山のような荷物を持った地元民たちで足の踏み場もないサルイ=タシ行きバスは定刻通り出発し,キルギスの山道をどんどん進んでいく。

木がないので見晴らしがよい。乾燥した大地に赤茶けた山肌。川はありえないほど澄んでいる。バスは進んでいく。

 

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郊外の家たち

 

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川で削られた大地。この川は(伏流しなければ)シルダリア川に合流して遠いアラル海に流れ込む。

 

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ゴツゴツの岩肌

 

 

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羊の群れとすれ違う

 

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宇宙が近い

 

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峠を越える。標高3500メートルぐらい。見渡す限り山しかない。

 

三時間ほどでサルイ=タシに着く。サルイ=タシは,テンシャン山脈と世界の屋根パミール高原に挟まれた高度3000メートルほどの盆地にある,小さな村だ。東に行くと中国・新疆,北に行くとフェルガナ盆地という交通の要衝であり,シルクロードのメインルート「天山南路」の通り道でもあった。

 

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村からはパミールの7000メートルの山々が見える。かつての旅人は,世界の最果てを示すかのようにそびえ立つこの白い壁を見て何を思ったのだろうか。

夏なのにとても寒い。バスから降りると,住民にいきなり絡まれウォッカを強要される。辺境の地とはいえ,さすが旧ソ連である。

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本日の宿

宿は2,3軒しかなく,特に選ぶ余地もない。そのうちの一軒に入ると,トラック運転手が数人食事している。その一人が英語を話せた。曰く,タジキスタンからパミールの峠(4655メートル!)を越えてここまで来,オシュに向かうらしい。

待っていると民家の離れのような部屋に案内される。宿泊客は僕だけかと思ったが,後からフランス人サイクリストが一人来た。その人と夕食で一緒になり,いろいろ話す。曰く,フランスから半年かけてここまで来たらしい。昨日までは雪降るパミール高原でテントを貼って生活していたという。僕も一月かけてドイツから来たわけなので、道中の話で盛り上がる。楽しい夜だった。

 

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